【前回の記事を読む】「母さんが一人で心配だ」——父さんが亡くなってから一人で暮らしていた母さんを心配し、実家に引っ越すことを決意
第五章 これからも二人で
一か月が直ぐ過ぎた。
母さん、
「丈哉、香子さん、ありがとうね。とっても楽しかったわ。新しい家で、スタートよ」
安心だ。
引っ越しで、一ヵ月は大変だ。香子も、毎日通って手伝っている。リフォームした家は凄く綺麗だ。
僕達の部屋もあるようだ。いつでも泊まれるようにと、作ってくれたようだ。嬉しい。引っ越しも落ち着いて、父さんの一周忌の日が来た。
「父さん、家が凄く綺麗になったでしょう。二人の息子は親孝行だよ。心配しないでね」
幸也夫婦と毎日、楽しそうに過ごしていた。
一年後、母が……急に亡くなった。
「丈哉、幸也、ありがとうね。母さん、凄く幸せだったよ。でも、父さんに会いたいから、悲しまないでね。父さんが待っているの。さようなら」と言って、亡くなった。
母を亡くした喪失感。心が空っぽになった。香子が居なければ、耐えられなかっただろう。
一番辛い悲しい事が、終わった。前を向かなくてはいけないと、自分に言い聞かせた。仕事に集中しよう。幸也も同じだろう。あと一年、退職を延期した。無我夢中で頑張った。
僕以上に、幸也は凄い。
「幸也、今日は二人で飲みに行こう」と、誘った。
「兄貴、待っていたよ」
二人で、ゆっくり飲んだ。両親の思い出話で、笑ったり泣いたり。心が軽くなった。二人で前を向いて歩こうと、誓った。グズグズしていると、母さんに叱られそうだ。
ようやく、悲しさも和らいで、仕事に専念。
ジョー君が高校生。早いもんだ。好青年になって背も丈哉さんを抜いた。
最近は丈哉さんも、元気になった。ジョー君が、よく泊まりに来るようになり、楽しみのようだ。