第一章 出逢い ~青い春~

翌日、優子は、いつもの喫茶店で入江に会った。

「ごめんなさい。私、貴方とは結婚しません。色々お世話になったのに、本当に申し訳ありません」
と言い、優子は頭をさげた。

「僕の事が嫌いですか?」
入江は予想していなかった返事を聞かされ、動揺した。

「いいえ。貴方は立派な方です。私がいけないんです。本当にごめんなさい」
優子は身を縮め、申し訳なさそうに言った。

「他に男でもいるんですか!?」
入江は怒気のある声で言った。優子は驚いた。理性のある入江が、そんな事を言うとは、思ってもみなかった。

「いいえ。いません」
「なら、どうして!?  貴女は、それで幸せになれるんですか!?」
「わかりません」

「わからない!? そんなバカな! 貴女に好きな男がいて、そっちを選ぶと言うなら、身をひきます。その方がスッキリする。だが、そうじゃないと言う。僕は納得できないな」

「どんなに仰られても、私、貴方と結婚はしないんです。だから、これ以上、お付き合いして、貴方の貴重なお時間をとるわけにはいきませんから、もうお会いしません。これまで本当にありがとうございました。本当にごめんなさい」

「優子さん。貴女が清純な方だと思って、僕は何もしなかった。それが男として物足りなかったんじゃないですか?」

「ちがいます。貴方が私を、そんなふうに大事にして下さった事に感謝しています。貴方に不満はありません。全て私自身の問題なんです」

入江は両手を握りしめて、わなわなと震えていた。

「もう、会ってくれないんですか?」
「はい。もうお会いしません」

二人の間に、長い沈黙があった。

「優子さん。貴女をあきらめるなんて無理です」
入江は震える声で言った。