道路に面した古い店舗を改装した小さな葬儀場に喪服に身を包んだ男女が入っていった。二つしかない式場の小さい方に入ると、中央に柩が二基寄り添うように並べられていた。その奥には小ぶりの生花祭壇があり、二基の柩の周囲はたくさんの花で彩られていた。

その周りを取り囲むように六脚の椅子が並べられていたが、右側の中央の椅子に背を丸めた禿頭の男が膝に両手を置いて座っていた。

二人が式場に入ると金清は顔を上げて笑顔を見せた。

「おう、よく来てくれたね。この通り、元々親戚も少ない上、事件が事件だから誰も寄り付かなくてね。随分寂しいところだったんだよ」

二人がお悔やみを言う暇もなく、金清は葬儀に似つかわしくないくだけた挨拶をした。

「金清さん、申し訳ありません。僕が出過ぎたことをしたばっかりにあんなことになってしまって……」

海智が唇を噛んだ。

「まあ、しょうがないさ。君のせいじゃない」

最後の事件から二週間以上が経過していた。二人が山本公園で今城蒼に会った日の翌日、古浜海岸に彼の遺体が打ち上げられているのが発見された。司法解剖の結果、睡眠薬の成分が検出され、警察は自殺と判断した。

海智はボイスレコーダーを警察に提出したが、やはりそれだけでは確証とはならず、五人の殺人事件の犯人は信永経子のまま捜査終了となった。

「警察も分かってはいるけど、被疑者が全員死亡したらどうせ不起訴処分だからね。それにしても名推理だったじゃないか。お見逸れしたよ」

「僕は何もできませんでした。それどころか、僕が独断で動いたせいで蒼は死を選んだんだと思います」

「蒼先生は元々死ぬつもりであの公園に行ったんだと思う。海智のせいじゃない」

一夏が援護した。

次回更新は11月7日(金)、18時の予定です。

 

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