第三章 ハギ

旦那と知り合ったのは、高校生活最後の秋だった。受験も無事終わり、人生初のアルバイトをしても良いと母親からのお許しが出たとのことで、彼は私が働くコンビニに現れた。

彼は十八歳、私は十七歳。十五歳で貞操観念に目覚め雄太と別れてから、私は一度も恋をしていなかった。何度か男を紹介されたが、誰のことも好きにはならなかった。彼氏が いる友達を羨ましく思いつつも、恋をしていなくても高校生活はそれなりに刺激的で、毎日充実していた。

彼はみんなからハギと呼ばれていた。私もみんなにならってハギと呼んだ。一緒にバイトをしているうちに、徐々に自分がハギに惹かれていくのが分かった。ハギは背が高く色白の端正な顔立ちで、まさしく美少年といった感じだった。パートのおばさま達も色めき立つほどだ。

しかし私は特に彼の外見に惹かれたわけではなかった。ハギのことを格好良いと思ったのは、あくまでも彼を好きになってからだった。恋に落ちるのに、理由なんてない。私の場合は特に、普段異性と触れ合う機会があまりなく、男子というだけで胸が高鳴ってしまったのかもしれなかった。

ハギもまた、男子校で普段あまり女子と触れ合う機会がなかったためか、私のことを異性として強く意識してくれているようだった。クリスマスの前に、ハギから、

〈今年のクリスマスは美雪さんと過ごしたいですよ〉

とメールが届いた。それは彼なりの告白だったらしい。

それからの毎日はヒロキと付き合っていた頃のようにまた輝き出した。毎日が本当に楽しかった。何気ないメールも、用のない電話も、もちろんデートも。人生に潤いが満ち、誰に会っても綺麗になったと言われた。いつも胸が一杯で食欲も落ちて体重も落ちたが、不思議なことにバストは膨らんだ。

ハギはヒロキや雄太とは違って、すぐには何もしてこなかった。付き合って一ヶ月ほどで手を繋ぎ、二ヶ月経ってやっとキスをした。三ヶ月経っても、彼は身体を求めてこなかった。

「本気で好きだから、躊躇してるのよ彼」

そんな友達の励ましを受け嬉しく思う反面、少し物足りなさを感じていた。

デートが終わり、シャワーを浴びようと下着を脱ぐと、クロッチのところがビッシャリと濡れている日もあった。そろそろハギとセックスがしたい。

ある日、家に遊びに行っていいかとハギに聞かれた。家には祖父母がいるが、それでもいいならと了承した。