今までもよく見た一家の景色だが、今日は特に異常に激しい。これ以上蹴られると危険だ。「死んじゃう!」恵理はすかさず仲裁しようと駆け寄った。
「お父さん、やめて!」野口に諭されて、乱闘を止めさせるぐらいのパワーを持ち直していた。
「恵理、こいつはお前に役場を辞めさせようと言い出したんだぞ。悪い奴なんだ。許せないだろう?」
「恵理、今すぐに私と家を出るのよ!」智子は祐一が恵理に気を取られている隙を狙って立ち上がった。バッグを取り出そうとした。
「早く、必要な物、これに入れなさい!」智子は痛みをこらえながら必死の形相だ。
「そんなことさせるか!」祐一が止めにきた。
「恵理、あなた、こいつに犯されたんでしょう? こんな鬼の住む家にあなたを置けない」
智子は叫んだ。
祐一は、経済面で二人にいてもらえないと暮らせないので困る。大いに困る。自分一人で生活できないことは十分承知しているからだ。
かといって二人の家出を止めるために話し合いで解決させようなんて考える脳がなく、放っておくとどんどん荷造りされてしまう。結局、暴力しか手立てがないので再び暴力を続けた。
ついに恵理は堪忍袋の緒が切れた。
「あんたは私のお父さんじゃない!」と言うと、酔って足腰のもたつく祐一の股間を思い切り蹴った。
「痛い。痛い痛い痛い」睾丸が潰れたかもしれないぐらいの激痛で祐一はその場に崩れ落ち四つん這いになって痛がった。
敵はもんどりうって暴力をふるうどころじゃない。「恵理、よくやった。さあ、今のうちよ、準備して!」
「うん!」
「こいつは私が食い止めるから、あなたは準備できたら家を出なさい!」
恵理が準備できるまで祐一はずっと痛がって戦意を喪失していた。痛くて反撃どころではない。
力のない女性はこれをやれば良い。ただ一つ、男のどうしても克服することができない弱点の睾丸。人間の進化の過程で何故、その危険な睾丸を体内ではなく露出させたままなんだろう? そう考えると不思議である。
おそらく祐一の睾丸は割れた。その痛さ、絶対的な現実からもう恵理に手出しできない。恵理は、自分の準備が終わって智子の準備を手伝っていた。
しかし、智子は意外な決断をした。
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