【前回の記事を読む】出世は忖度、飲み会は強制、昇格はできレース?――銀行組織に根強く残る"昭和的慣習"とその歪んだ現実
本部異動
支店で二年ほど現場経験を積んだあと、本部に異動となりました。支店長室に呼ばれ、次の部署名を告げられますが、何をする部署なのかさっぱりわかりません。初めての異動で舞い上がっており、確認しなかったのです。
着いた先はディーリングルームがありトレーダーが株価や為替の相場を横目に取引を行うテレビで観た世界でした。「うおー、かっけー。俺もトレーダーかあ!?」興奮しました。
思わず見入ってしまい挨拶が遅れました。直属ではない上司から「挨拶もしないで失礼なやつだな」と言われ、「あー、ここ銀行だ。挨拶うるさいの忘れてた」先輩の戒めを思い出したのです。
一人一人の席に挨拶に伺います。「挨拶、まとめて一回でいいんじゃないか? これもコンサルにない銀行カルチャーか?」と思いながら。
そして上司に呼ばれ業務内容について説明を受けたのですが、衝撃でした。「君にはここでシステムを担当してもらう。デリバティブのシステムだ」
真っ青になりました。血の気が引くとはこのことでしょう。「オレの話聞いてた? システム嫌いってあんだけ言ったのに伝わってない? 大体、デリバなんて支店にいた時一度も売ったことないんだけど」
絶望的な気持ちで自席に向かうと、チームリーダーと呼ばれる人がいて、またすっごい強面なのです。挨拶しても無視。「この先この人と一緒に仕事するのかあ。大丈夫かぁ?」不安は見事に的中します。
チームリーダーから「これ読んどいて、今後の業務で大事だから」と渡された資料、表紙を見ると「システム開発の進め方」とあります。
パラパラ捲ってみるとIBMのロゴマークがあり、「はあー、やっぱりIBMかぁ。システムかぁ。こういう資料、前、勉強したよな」と泣きそうになりました。モチベーションだだ下がりです。
やる気のない姿勢で仕事に取り組むのは悪いことだともちろん思っていましたので、見かけだけでも元気を装うのですが、結果が出ません。IBMほどバリバリのITスキルが求められるわけではないのですが、やっぱりわからないのです。
半年位経つうちに、チームリーダーから「お前はいったいこの部署で何がやりたいんだ」って毎日のように個室に連れていかれてネチネチ説教を受けることになりました。「オレが望んだ異動じゃねー」言い返す気力もなかったです。
周りはオジサンだらけでチームリーダーの味方ばかり、四面楚歌でした。部長に相談しましたが、「システムは宿命と思いなさい」と言われ「はぁ?」全く意味がわかりません。
この部長の父親、元軍人と聞いたことがあり、「やっぱり軍人の家庭で育つような人って死生観がぶっ飛んでるな。腹の据わり方が半端ねー」なんて思いました。