『あのさ、ルールって変わるじゃない? 時代によっても国によっても違うじゃない? 一夫多妻の国だってあるじゃない。たまたまこの国に生まれただけで、妻以外の人を愛してはいけないなんて理不尽じゃない か?』

詭弁だ。

と博昭は思った。

この男は自分に都合のいい情報だけを語っている。

確かに一夫多妻の国はある。しかし、一夫多妻の国もあれば、不倫をすると斬首される国もある。この男はそういった事実は伏せている。あるいは知らない。自身に都合のいい情報しかインプットしない人間はたくさんいる。

生まれつきのペテン師。それがこいつだ。

『そんなことはどうでもいいの!』ついに良美が声を荒らげた。

『苦しいの! 私は苦しいの! 私は私だけを見てほしいのよ!』

やれやれ。

やはりこの女もバカだ。自分のことしか考えていない。

博昭はボイスレコーダーに呟いた。

「勝手にしやがれ」

次回更新は10月21日(火)、21時の予定です。

 

👉『永遠と刹那の交差点に、君はいた。[注目連載ピックアップ]』連載記事一覧はこちら

【イチオシ記事】二階へ上がるとすぐに男女の喘ぎ声が聞こえてきた。「このフロアが性交室となっています。」目のやり場に困りながら、男の後について歩くと…

【注目記事】8年前、娘が自死した。私の再婚相手が原因だった。娘の心は壊れていって、最終的にマンションの踊り場から飛び降りた。