『あのさ、ルールって変わるじゃない? 時代によっても国によっても違うじゃない? 一夫多妻の国だってあるじゃない。たまたまこの国に生まれただけで、妻以外の人を愛してはいけないなんて理不尽じゃない か?』
詭弁だ。
と博昭は思った。
この男は自分に都合のいい情報だけを語っている。
確かに一夫多妻の国はある。しかし、一夫多妻の国もあれば、不倫をすると斬首される国もある。この男はそういった事実は伏せている。あるいは知らない。自身に都合のいい情報しかインプットしない人間はたくさんいる。
生まれつきのペテン師。それがこいつだ。
『そんなことはどうでもいいの!』ついに良美が声を荒らげた。
『苦しいの! 私は苦しいの! 私は私だけを見てほしいのよ!』
やれやれ。
やはりこの女もバカだ。自分のことしか考えていない。
博昭はボイスレコーダーに呟いた。
「勝手にしやがれ」
次回更新は10月21日(火)、21時の予定です。
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