『亜紀!? 良かった! いつ電話しても出てくれないから……』
「……何?」
『僕、十分反省しているから、会ってくれないかな?』
「反省って何を?」
『いや、あの、相手の家に泊まってしまった事を……』
「相手は諦めてくれたの?」
『それが、亜紀と別れて自分と付き合ってって泣かれて……』
またか。泣かれて曖昧な関係のままって事ね。
「泣かれたから何だっていうの? 私は? 私の気持ちは!?」
『それは……でも、社長の娘さんだから……強く言えなくて……』
「強く言えないって、じゃあ、このままなの? 私は俊雄さんの彼女じゃないの!?」
『ごめん。でも、じっくり話せば分かってくれると思うし』
「そんなのいつまで待てば良いの!? もういい加減にして!」
私は電話を切り、スマホを鞄に投げ入れた。悲しいのか、悔しいのか、涙が溢れてくる。
俊雄さんが……もう分からないよ……。
「亜紀ちゃん」
突然背後から南君に抱き締められた。
「……そんな彼氏、忘れさせてあげる」
「え?」
ベッドに押し倒され、キスをされる。
「ん……、んん~……」
抵抗しても、直ぐに南君の舌が口内を犯し始める。
「はぁ、はぁ、はぁ……」
長いキスの後、呼吸が乱れて苦しくなった。
「会話が聞こえてきたよ。亜紀ちゃんを大事にしない彼氏なんて、要らなんじゃない? 俺は大事にする。だから……だから俺を受け入れて……」
「受け入れるって……」
「亜紀ちゃんが欲しい」
ギュっと抱き締められて混乱する。でも、今は慰めが欲しかった。だから……私は南君の背中にそっと手を回した。