ヌシがしつけてくれる猫を探す

「もう一匹、猫を飼ってください」

ヌシの話を聞いて、わたしは子猫を探し始めた。

まずは、子猫というものが、どのくらいの大きさで、どの程度の手間がかかるのか。まるで浦島太郎になった気分だ。

ヌシを飼い始めた当時とは、猫種も環境もずいぶん違う。インターネットで検索したり、ペットショップを見に行ったり、休日は子猫探しに明け暮れた。

昔と違って、今の流行りの猫は、より犬種に近く、非常に愛らしいのが好まれているらしいこと、餌も多種多様、栄養バランスも子猫用に考えられているし、おやつもミルクも何でも揃っている。キャリーケースだっておしゃれだ。

ただ、いないのは、お目当ての子猫だ。

わたしは探しているうちに、ヌシと真逆の猫を飼おうと思うようになった。アメリカン・ショートヘアは、わたしの中では、生涯、ヌシだけだ。

ヌシは縞々柄で毛は硬く、ダブルコート(二重)の短毛種、目は、いぶした金色。だから、反対は白、長毛種、目はブルー。そうなると、ターゲットはおのずと絞られてくる。

顔の真ん中が黒い、ポイントがあっても可愛いなあ。チンチラか、トンキニーズか。

そのうちにバーマンという猫種があることを知り、それがミャンマーの猫で、日本では珍しい猫であることを知ったのは、偶然だった。

ある猫カフェで靴下を履いた猫を見つけた。猫カフェのスタッフが、この猫は長毛種のバーマンという猫で例外なく靴下を履いていて、穏やかな性格だと教えてくれた。わたしはこの時初めて、聞き慣れない名前の猫を知った。

 

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