【前回の記事を読む】「ヌシ」は外出することは少なく、ずっと家の中で生活してきた。年齢を重ね自然に弱ってきたのか寝る時間が長くなっていった
第二章 女神様がやってきた
そんな日が続いていたある日曜日、わたしはふと、昨年の夏、やっぱりこういう目をしてヌシがわたしを見ていた時があったことを思い出した。可愛がっていたウーパールーパーが死んだ時だ。
もともと熱帯魚を飼うのは得意だった。エンゼルフィッシュだって十三年も生きてペットショップのおじさんに褒められたくらいだ。
だから、飼い始めたばかりのウーパールーパーがひっくり返っているのを見た時、すぐには信じられずにいた。しばらく放置するとまた元に戻るかもしれない。餌を与えて水槽を叩いてみた。だが、奇跡は起きなかった。
あの日わたしは、突然のペットの死でパニックになっていて、家の中で愕然としていた。そうだ、あの時も、ヌシは同じ目をしてわたしを見ていたような気がする。
何かを訴えていたのかもしれない、そう思って、その日の夕方は、早めの夕食を作り、また、ヌシの目がうるうるしてくるのを待った。
案の定、ヌシは来た。
あちらがじっと見るから、わたしもじっと見返す。
十四、五年も一緒にいて、そんな時間を持ったのは初めてだった。