「社長、お茶をどうぞ」
高木は笑っている。
「高木、君の分も一個欲しい」
「ダメです。僕の分として奥様から頂きましたので」
「冷たい秘書だ。食い物の恨みは怖いぞう」
「副社長はいつでも頂けますよね」
「妻と食べる大福も格別だけど、会社でみんなと食べるのも良いんだ」
「何ですか! それ。贅沢です」
おはぎの時も、同じ会話をしたような……。
「そうだ。社長のお土産を食べよう」
「残念、家で妻と食べる。妻に伝えてある。君たち二人、漫才師のようだ。アハハハハ」
「横取りした張本人に、言われたくないです」
「残念だが、胃袋の中。アハハハハ」
「もう少し、早く食べるんだった」
「次は、もう少し早く来るよ。ハハハハ」
「はぁ~ん。何ですか。それ!」
「ストレス解消になったよ。あと少し、頑張るか! じゃ」
と、電話が鳴った。
「副社長、ゴールド・ウイの社長から電話です」
社長、ソファーに座り直した。
「お電話代わりました。はい。新社屋の件ですね。はい! ありがとうございます。後日、契約書お届けいたします。改めて、吉田と伺います。失礼いたします」