悔しくて、言葉が出ない。どうすればいいの。

玄関が開いた。丈哉さんが、帰ってきた。

「どうしたの?」

「電話に出ないから、何かあったと思って帰ってきた」

リビングへ。

「佐和、何で居るんだ!」

「香子さんに丈哉と別れてほしいとお願いしに来たのよ」

「はっきり言ったはずだ! 憎まれるような事はするな!」

「この家で、あなたと子育てしたい!」

「君はわがままで身勝手。嫌いだ。大嫌いだ。顔も見たくない。妻に悲しい思いをさせたら、許さない! 出ていけ! 早く! 顔も見たくない!」

「やり直したい!」

「止めてくれ。気分が悪い。警察を呼ぶか!」

「そんなに、私の事が嫌なの!」

「そうだ! 二度と、僕の前に現れるな!」

「丈哉さん、落ち着いて」

私は驚いた。

「これ以上、憎みたくない!」

「こんな丈哉を見たの、初めて。本当に終わりなのね」

「そうだ! 香子を心から愛している。死ぬまで一緒に居たい。傷つけたら、許さない!」

「……分かった。香子さん、ごめんなさい。もう二度と来ない」

「分かったら、帰ってくれ!」

「帰る」

玄関まで送った。

「香子さん、本当に丈哉に愛されているのね。酷い事をしたわね。もう来ないから安心して」

帰っていった。

「ごめんな。嫌な思いさせたね」

「大丈夫よ。佐和さんに、丈哉さんは私のものよ!と言ったの」

「そうか。頑張ったな」

「絶対、譲れないもの」

「頼もしいな。アハハハハ、安心した」

「大丈夫よ。私は丈哉さんの事だったら、強くなれるって分かったの」

「愛している」

優しく抱き合った。