全役員「…………」黙っている。決議では全役員一致で、副社長が社長に就任した。

明日から部屋の移動、書類の整理、挨拶回り、副社長としての理念決め、会食がほぼ毎日、土日が早く来ないかなぁ。香子の太ももに触りたい。

「副社長、何をボ~ッとしているのですか? また、奥様を思い出しているのですね」

「君は最近、僕の心が見えるのかい?」

高木秘書、

「副社長が遠くを見ている時は、頭の上に、香子さんが見えます」

「アハハハハ。君は三流占い師か」

「副社長のしか見えませんけどね」

携帯が鳴った。見たら、佐和(さわ)だ。何だろう。

「はい。どうした?」

「食事は出来ないが、八時だったら少し時間が空くが」

「じゃ、井澤のカフェで」

何だろう。大事な話って、聞くだけ聞こう。香子に連絡。

「今日、夕食要らないよ。前の妻から電話があって、話があるそうだ。一時間程会ってくるね。心配しないで」

僕は七時過ぎに着いて、夕食を取った。八時になっても来ない。いつもそうだ。必ず十分は遅れてくる。嫌いなところだ。十五分後に来た。あきれるな。

「久しぶりね」

「相変わらず、約束の時間を守れないんだな。用件は?」

「挨拶もなし?」

「話って?」