年が明けたお正月過ぎに、栄養指導目的の1週間の入院を担当医から勧められて入院した時、驚いたのは病院食だったのに入院してから日に日にクレアチニンの数値が2から3になり4になり5になりと、雪崩のごとく数値が悪くなっていった。

医師からは合併症がない今のうちに早めに人工透析導入を考えた方が良いこと、透析をするためのシャントを作る手術をした方が良いことなどを提案され、さすがに目の前が真っ暗になった。

心の準備をしていたつもりだったが、透析になったら『一生の終わりだ!!』と思ってしまった。

入院中に悩んで眠れなくなって夜勤の看護師さんに相談したこともあった。「一日でも透析導入を延ばしたい気持ちは分かるけれど、一生の内の1か月や2か月延ばしたところで合併症を引き起こす確率が上がるだけで何のメリットもないですよ」の言葉に気持ちが揺れた。しかし、なかなか決断できずにいた。

ひとまず退院のあとに病院で血液検査を待っていた時に、悩んで真っ暗闇になってうつむいていた時、右方向が何かきらきら光り始め、その光が近づいてくるのだ。『何?!』と思って顔を上げると、『えっ――――!』

『うっそぉー!』な、な、なんと、SPらしき黒いスーツを着た人の横にアイドルグループSのSさんが歩いてくるではないか!

わたしはその頃、アイドルグループSのファンクラブに入っていたほどのファンで、腎臓が悪化する前は何回もライブに行っていた。

芸能人で一番会いたいと思っていたそのSさんが目の前を通り過ぎていった。当時、映画の撮影の時期で海外できついロケをしていると記事で読んでいたので、どこか体調を崩して診察に来ていたんだと思った。

夢のようだった。神様から「落ち込んでいる場合じゃないぞ! がんばれ!! 病気に負けるな!!」と言われているようで、一番のご褒美をもらえたような気がした。

その瞬間から気持ちがシャキー!となって、『人工透析でも何でも受け入れてやるでー! かかってこいやー!!』と、勇気と元気がふつふつと音を立てて湧いてきた!

この退院のあと、2月にシャントの手術でまた入院をした。

透析には病院や専門クリニックで受ける血液透析と自分自身で行う腹膜透析、在宅透析があり、フルタイムで働いていたので、自分で行う透析を薦められたが、特に在宅透析は自分自身で注射針を刺すのでとても無理。迷うことなく通院での血液透析に決めた。

 

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