「井口社長のお耳にも入りましたか。恐縮です。妻の傷つきようが酷かったので、許せなくて、会社まで押しかけてしまいました。声を荒げたので、社員さんが気付いたのでしょうね」

「本当に、すみませんでした」

「いいえ、井口社長、止めてください。頭を上げてください。ただ、今後、仕事では絡みたくありません。信用が無いと組めません」

「分かりました。担当から外します。これでよろしいですか」

「仕事はお互い信用、信頼で成り立ちます。その点では、井寄建設さんとは、安心しています」

「吉田社長、ご迷惑をおかけしました」

「いやいや、井口社長も大変ですな。うちの専務は竹を割ったような性格だけど、いつも仏頂面なんだよ。僕も怖いですよ。アハハハハ」

「何を言っているんですか。僕は社長に似ているんです。社長の背中しか見ていませんですから、社長のせいです」

「僕のせいか。アハハハハ」

井口社長は帰られた。

「専務の弱点も分かったし、部屋に戻るとするか。香子さん、今度は必ず食事しようね」と部屋を後にした。

丈哉さんって凄い人です。

三時半頃、部屋を出た。手をしっかりつないで。

「専務、お帰りですか?」

「おー。今日は休みだから、悪いが先に退社するね」

「奥様と一緒でいいですね」

「ああ、羨ましいだろう。じゃぁな。お疲れ」

四時に家に到着。その足で、お夕飯のお買い物、丈哉さんも一緒に行くらしい。

「丈哉さん、今日は何食べたいですか」

「目が生き生きとした魚」

「うふふ、分かった。金目鯛の煮付けにしましょうね。う~ん、あとは、ほうれん草の白和え、ごぼうサラダ、キュウリの浅漬け、お味噌汁、ティッシュペーパー、キッチンぺーパー」