各駅停車する地元の私鉄に乗って四駅。同じ市内だがまるで小旅行の気分だ。雄太はこんなに遠くから毎日自転車で通学しているのかと感心した。
初めて降りる小さな無人駅。雄太は駅前のコンビニまで迎えに来てくれた。ヒロキと別れてから季節はもうすっかり夏に変わり、羽のある虫たちがコンビニの灯りにたくさん吸い寄せられている。
爽やかな白いティーシャツにジャージという格好で現れた彼は、思いのほか明るい声で私に声をかけた。飲み物を買うためコンビニに入って初めて、私は雄太の顔をまじまじと見た。すらっとした背丈にシュッとした輪郭。
初めて彼を見た人はきっと格好良いと思うのだろう。しかし、ふとした拍子に笑った彼の口元は、いやらしいほどに歯茎が前に突き出して、少し気味が悪かった。
コンビニを出ると彼の自転車の後ろに乗って家に向かった。家に泊まりに来ないかと雄太に誘われたとき、私はまず親の存在を懸念した。しかし、彼は家の構造上問題ないと話していた。
凄く広い家なのだろうかと想像していたが、連れて来られたのは普通の団地だった。静かに入って、と言われて何も言わずにそそくさと玄関を通り過ぎる。
入ってすぐ右側の六畳ほどの部屋に、私は通された。雄太が私の靴を部屋まで持ってきた。