第二章 愛の試練 

ある日の午前十時頃、携帯が鳴った。見たら、知らない番号。取らなかった。でも立て続けに七回、八回も鳴る。

「アレ、知り合いなのかな」

取るのを躊躇ったが「はい、どちら様ですか」

「香子、僕だ。大切な話があるんだ。今日、時間取れないか」

「どうして、私には関係ないでしょう」

「いや、君に会って話したい」

「私は、再婚しているのよ」

「でも、会って話したい事がある。母さんからの伝言もある。お昼でもどうかな」

「……いいえ、二時頃で良いんでしたら」

「分かった。上野の駅まえのカフェでどうかな?」

「分かりました」

「香子、こっちだ。久しぶりだね。元気だった。ええー、凄く綺麗になったね」

「要件は?」

「僕と再婚してほしい」

「えっ! 何を言っているの!」

「君と別れて、君を愛していると分かった」

「自分で言っている事、分かっているの」

「離婚をしてほしいと言っていながら、自分勝手だと充分、分かっている。僕も再婚して、子供も出来たんだ。だけど、妻は仕事もしないし、家事も出来ないんだ。母さんが大変なんだ。母さんと話し合って、今の妻と離婚して子供を引き取って、香子と再婚したらと言っている。香子なら子供が望めないから、立派に子育てしてくれるだろうと。僕も同じ事を思っていたんだ!」

「…………」

「どうだろうか? 仕事はしないでいいから、子育てと家事と両親を見るだけでいいから」