このたび、旧版の増補改訂を決意した理由について記す前に、白内障という病気と、それに対する眼科医療の現状について簡単に説明しておきましょう。

白内障は誰もが避けることのできない眼の病気です。主に加齢によって、眼のレンズに相当する水晶体が白く濁って起こります。「目がかすんで見えにくい」「ぼやけて見えづらい」などの症状が出るのはこのため。

一度濁ってしまった水晶体は元の状態に戻すことはできず、視力を回復する根本的な治療法は手術以外にありません。濁った水晶体を取り除いて、人工の眼内レンズに置き換える治療が白内障手術です。

2000年代に入って、白内障手術は革命的に進歩しました。まず、折りたたみ式の眼内レンズが登場し、眼の組織を大きく切開しなくても済むようになって、日帰り手術が可能になりました。遠近のどちらかにしか焦点が合わない「単焦点眼内レンズ」のほかに、近くにも遠くにも焦点を合わせることができる「多焦点眼内レンズ」も開発されました。

また、すべての眼科クリニックが先端医療機器を導入しているわけではなく、精度の高い医療を受けようと思ったら、医療機関選びも重要になります。

2019年当時、多焦点眼内レンズについて「聞いたことがある」という方は少なからずいらっしゃいましたが、私のクリニックで多焦点眼内レンズを希望した患者さんですら、「よく見えるらしい」くらいの認識で、多焦点眼内レンズのメリットや選び方までは知らない方がほとんどでした。

あれから6年、状況は大きく変わりました。インターネットを中心に白内障にまつわる情報が流布しています。ところがそのために今度は、氾濫する偏りがちな情報のなかから正しい情報を取捨選択しなければならない難しい事態にあるようです。

 

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