「奥宮さん。その、お母さんが自由にしなさいって言われるのが、貴女にとっては逆に束縛だったとは思われませんか?」
優子は、思ってもみない質問に戸惑った。ゆっくり考えてから、率直に答えた。
「確かに。そうも言えるかもしれません。とにかく、母は社交的で、私とはまるでちがいます。父とも恋愛結婚ですし。母から見たら、私は、はがゆいんだと思います」
「お父さんとお母さんは、仲が良かったんですか?」
「えぇ。とても」
「貴女は、お父さんとお母さんとでは、どちらと特に仲が良かったんですか?」
「どちらともです。性格が似ているので、父との方が気が合ったとは思います。でも、私は、二人の中には入れませんでした。それくらい両親は仲が良かったです」
「いけばなは、どうして始められたんですか?」
「両親が、結婚するまでのたしなみにって、お料理や茶道、華道を習わせてくれました。でも、私は美しい花に触れられる華道が一番好きで、特にご縁を頂いた嵯峨御流の魅力にはまってしまって、正教授にまでなれました。それで、両親に頼んで、自宅で教室を開かせてもらったんです」
「先に言われましたが、私から花をとったら、何もありませんって、どうしてですか?」
柚木は核心に触れようとした。