第一章 出逢い ~青い春~
二
柚木は、切なげに訴える優子の様子に胸を打たれていた。透き通るように白く、なめらかな肌の美しさ、大きな瞳の澄んだ輝き、まばたきする度に動く長い綺麗なまつげ、話す柔らかそうな唇。こんなにも女性の美しさを目の当たりにした事はなかった。神のなされたその造形美に感動していた。
「時々、息が苦しくなるんですね?」
「はい」
優子は不安そうに答えた。
「どのような呼吸になりますか?」
「息が急に荒くなって、うまく吸えなくて、呼吸が速くなって、息苦しくて……ひきつけみたいに体がこわばって、動悸がして……失神もしました」
「過換気症候群です。極度の精神不安や強いストレスで発作が起きます。若い女性に多くみられるものです。これだけのショックを受けられたのですから、起こっても不思議ではありません。本当にお辛かったですね。ちゃんと薬もありますから、大丈夫ですよ。悩んでいる事を、カウンセリングで解きほぐしていきましょう」
柚木は優子の心情を推し量って、しっかりと説明をした。
「よろしくお願い致します」と、優子は頭をさげた。
「はじめの発作は、警察署で起きたんですね?」
「えぇ。……私、私、酷いんです。父の遺体を見て、息が苦しくなって、失神したんです。私 ……父の手も握ってあげなかった! そのまま別れて……病院にいる間に、父は焼かれて、骨だけになってしまった! 私、酷い娘です!」
優子は肩を震わせ、激しく泣きだし、顔を手でおおった。
「ご自分を責めないように。酷いショックを受けられたんですから、誰でもなりうる状況ですよ」
「でも、手くらい握ってあげれば良かった」
優子は泣き続けた。