もちろん、父や母に言われたわけでもなく、私の意志で勝手にそうしていた。
やっぱり私は、心のどこかで、家族との時間、家族愛に飢えていたのかもしれない。しかし、アルバイトを辞めてからは再び、一樹の帰りを待つ間、夕飯を作ったり、洗濯をしたり、部屋の掃除をしたりと、16歳、17歳は主婦のような生活をしていた。
たまたま大学が休みのあの日。窓を開けて二人で布団でゴロゴロと昼寝をしようとしていた時、近所にある幼稚園からお遊戯の音楽や子どもたちの楽しそうな声が聞こえてきた。
一樹は「う〜ん、うるさいなぁ」と言っていたが、私は不思議とそんな子どもたちの声や姿を見ていると、なぜだかとても心が落ち着いた。
その時、私は生まれて初めて【夢】というものを持った。
保育士になりたいと本気で思った。
もちろん、初めは純粋に保育士になりたいという夢だったが、ずっと母を見てきてお金のためだけに離婚しない姿に軽蔑もしていた。
私はお母さんみたいにはなりたくない。
もし保育士になれれば、資格をとり、もし結婚して離婚となっても、この資格は私自身を守り、少なくとも、あの母親のようにはならない道を導いてくれるようにも思えた。
母とは違い、自立した女性になりたいとずっと思っていた。
次回更新は9月27日(土)、20時の予定です。
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