男にとって驚くほど高額な支払いに、己を知り由記子から去ってゆくはずだ。由記子の誘いに男は思い詰めた顔で言った。「店に行ったらまた会ってくれるんだね」と。自分の思い付いた策に絶対の確信を持つ由記子は、勝ち誇ったような顔を男に向け、「いいわ」と言って嬉しさを見せた。

由記子が今の店に来て二ヶ月が過ぎた頃、聞く話によれば店の経営者が代わり、ホステス達も一掃するという話だ。客を呼ぶホステスも少なくなったその夜、誘った男が店に来て指名された時、ホステス達の由記子を見る目が変わったのを感じ、優越感で心が満たされてゆくのが分かった。

この日で隣に座る男とも会う事もないのだと、心地よい気分に酔いの回る由記子は、まさかの出来事が待っているなど気づくはずもなかったのだから……。

 

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