何度(ど)も季節(きせつ)がめぐり、二人が青年と娘(むすめ)に成長(せいちょう)したある日、おいらが昼寝(ひるね)から覚(さ)めてウトウトしていると、イブが大事(だいじ)そうに二つの木の実(み)を持(も)ってきて、おいらに言ったんだ。

「ねぇねぇ、これ、あの木の実(み)よ。とっても美味(おい)しかったわ。アダムにあげたくて、二つ持(も)ってきたの」

おいらは、すっかり目が覚(さ)めて、

「イブ、待(ま)って!」

って叫(さけ)んだけど、イブは走り去(さ)った後だったんだよね。

その日からアダムとイブは、おいらに会いに来なくなってしまった。

神(かみ)さまにこの園(その)から追(お)い出されてしまったって風が教(おし)えてくれたよ。

おいらは、神(かみ)さまに二人と会わせてくれるようにお願(ねが)いしたんだ。

神(かみ)さまは、種子(たね)のおいらを風に乗(の)せて、アダムとイブの所(ところ)に運(はこ)んでくれたんだよ。

次(つぎ)においらが咲(さ)いたのは、イブが、小さな男の子を、抱(だ)いている時だった。おいらが、

「イブ、やっと会えたね」

と言うと、彼女(かのじょ)は、言った。

「マナ君(くん)ね。お久(ひさ)しぶりね。私(わたし)があの木の実(み)を二つ、アダムに見せて、その一つを食べながら、

『これ、あの木の実(み)よ。とっても美味(おい)しいわよ』って言った時の彼(かれ)のさびしそうな顔を、私(わたし)は一生忘(わす)れないわ。彼(かれ)は、もう一つの木の実(み)を、私(わたし)の手から受(う)け取(と)ると、まるで、毒(どく)でも食べるかのように、食べたのよ。私(わたし)にはあんなに美味(おい)しい木の実(み)なのに…………」

 

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