アダムは言った。
「この子はイブだよ。ぼくたちは、神(かみ)さまがつくってくれたんだよ。神(かみ)さまは、ぼくに言っていたんだ。『園(その)の中のどの木の実(み)でも自由(じゆう)に、食べていいからね。ただ、ひみつの木の実(み)は、取(と)って食べたらダメだよ。それを取(と)って食べたらその時、君(きみ)はきっと死(し)んじゃうからね』って」
イブも言った。
「そうなの? 私(わたし)には、さっき、神(かみ)さまが、園(その)のどの木の実(み)からでも食べていいけど、真(ま)ん中にある木の実(み)については、『食べたらダメだよ。それに触(ふ)れてもダメだよ。君(きみ)たちが死(し)ぬといけないからね』っておっしゃったわ」
アダムが、
「そうなんだ。あの美味(おい)しそうな木の実(み)だけ、食べてはいけないなんて、残念(ざんねん)だなあ」と言い終(お)わらないうちに、イブが、
「エッ、私(わたし)は、そんな危(あぶ)ない実(み)、食べたくないわ。触(ふ)れてもダメだなんて、いっそのこと、あんな木、無(な)い方がいいのに…………」
と言った。
おいらは心の中でこう思った。
“きっとその実(み)は、美味(おい)しくなるのにすごく長い時がかかるんだ。この二人が神(かみ)さまから見て大人になった時に、その実(み)は、とても美味(おい)しくなって、成人(せいじん)のお祝(いわ)いに神(かみ)さまがくれるんじゃあないかなあ。神(かみ)さまが二人をつくったのも、よろこびをあげたいからだと思うからね”
それからおいらは、毎年、春に咲(さ)いて秋に種子(たね)になって、土の中で冬を過(す)ごして、春にまた二人のそばに咲(さ)いたのさ。そして、とっても仲(なか)の良(よ)い二人の姿(すがた)をいつも見ていたんだ。
アダムとイブは、おいらに色々な動物(どうぶつ)の話もしてくれたよ。
み使(つか)いさんの話もしてくれたよ。神(かみ)さまの話もしてくれたよ。本当に優(やさ)しくて、面白(おもしろ)い方なんだって…………