兄貴は、込み上げる怒りを何とか抑えて、中井部長に伝えた。

「ああ、そうですね」

と、とぼけた口調で、彼は応じた。

「私が病院に貢献していないので退職を勧めると、書かれています」

「そんな書き方はしていないと思いますが」

「書かれています。書面は、法人である病院と、祥士理事長と中井総務部長のお名前で書かれていますが、ご存知ないのですか?」

「そうでしたか」

「中井総務部長が書かれたのではないのですか? しかも、こんなにも大量の内容証明郵便を、妻が受け取り、どれほどの恐怖を味わったと思われますか? ご自分のご家族が、こんな目に遭ったら、どんな気持ちになりますか?」

「えーと、私は、よくわかりません」

「中井総務部長のお名前が記載されていますよ、あなたが書かれたのではないのですか?」

「それは……加瀬弁護士に、お任せしていますので」

「それでは、加瀬弁護士が書かれたのですか? 理事長とあなたの名前で」

「いや、文書作成はお任せしたということです」

「退職届用紙も同封されていましたね。よくこんな事が平気でできますね。万一書くとしても、一身上の都合とは、絶対に書きませんから」

「あ、退職届、書かれるんですか? 今、言いましたね? 退職届、出されるんですね? ではすぐに、理事長に報告します」

中井総務部長は、それまでのとぼけた口調から、急に闊達に切り返してきた。

 

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