いずれにしても見つけたら下へ降りていくだろうから、ホテルから出た処で捕まえよう! しかし直ぐタクシーに乗ったら困るな……と思っていた。
まあ! その時はその時だ……。
余り細かく詰めるのがキライな余は、そう思ってゆっくりと座った。
浩は、見知らぬ男に襲われた不安が少し軽くなる感じがした。良が一緒に対処してくれると言ってくれたことから元気も出てきた。
良がどんな仕事をしているか知らないが、落ち着いた物腰と丁寧な話し方で信頼出来た。するとこのままじっと待つより攻めた方が正解だ!と思い、良へ、
「良さん! このままじっとして待つより何か仕掛けた方が良いように思うのですが如何ですか?」
良は、浩から突然提案が出たことにやや驚き、
「確かに! 待っているだけでは対処の方法が読めませんのでその方が良いですが……何か良い案が出ましたか?」
「今、思い付いたのですけど、一旦、五反田の私のマンションへ戻り、其処で仕掛けをしてブリーフケースの信号を追って来る不審者を捕まえるのはどうでしょうか?」
「それが出来れば一番です。しかし余程上手く仕掛けないと敵も素人ではないようなので、又直ぐ発砲する危険性が有ります。十分詰める必要が有りますね! 一瞬でケリが付くような仕掛けが上手く出来れば良いのですが……」と言って腕を組んだ。
浩は、頭に中に有ったプランを必死になって組み立てた。
そして暫くして、
「良さん! 私は手品が趣味です。偶にミニ劇場でライブの間にマジックショーをやったりして、小遣いを稼いでいます。其処で思い付いたのですが、入口に仕掛けをして、倒れたところへ頭の上から重い物を落とすのは如何ですか?」
「具体的にはどのようにするのですか?」
【イチオシ記事】帰ろうとすると「ダメだ。もう僕の物だ」――キスで唇をふさがれ終電にも間に合わずそのまま…
【注目記事】壊滅的な被害が予想される東京直下型地震。関東大震災以降100年近く、都内では震度6弱以上の地震は発生していないが...