【前回の記事を読む】なぜ自分が狙われるのか分からない! 撃たれた男が訴える恐怖と、謎のブレスレット&ブリーフケースに隠された追跡の理由とは?

第一章 浩、狙われる!

良の読み通り、余鍾馗はグリーングラスホテルの見えるところまでタクシーで来ていた。 余は、手元のスマホをずっと見ていたが、急に画面に出ていたブリーフケースの位置を示すアイコンが消えた。

「あ!」

又あいつが電波を閉じ込めるような工夫をしたな!と考えた。

余は必ずあいつを捉まえられるという自信から、ついホテル新橋東京でぐっすり寝込んだのが失敗だった。

丸田のタンメンにC国毒キノコの無味無臭液を上手に混ぜたのは、実に大成功で、東京駅に着いたあたりで毒キノコの症状が出て、仮死状態になる筈だったのに……。

先回りした余が新浦安で予定通り列車に乗ろうとした時には、既に丸田のバッグは京葉線から船橋の方へ移動していた。

それを知って、直ぐ動いて後を追ったが、常にあと一歩のところで逃している!

あのタンメン屋で、余のスマホにバッグの発信信号を取り込む特殊アプリが付いてなければ、今頃バッグは行き先不明で大変な事に成っていた……。

でもしっかり対応出来ている俺は、やはり大した男だ!と思っていた。

この驕りと傲慢さがいつも自分の失敗の原因になっているとは気付いてもいない!

何としてもこのグリーングラスホテルに居る間に見つけて、カバンを確保しないと今迄の苦労がダメになる。

そう思いながらグリーングラスホテルの車寄せに着くとボーイが直ぐ近寄って来てタクシーのドアを開け、

「ようこそグリーングラスホテルへ!」と言ってドアを押さえて待っていた。余は支払いを終え、無言で小さなロビーに入り、そばに居るボーイへ、

「コーヒーと軽食を取りたいのだが……」と言うとボーイが、

「ロビーフロアに御座います」と応えて先のエレベーターホールへ行き、ボタンを押してエレベーターを開け、ロビーフロアのボタンを押した。そして扉を押さえ、

「どうぞ、ごゆっくり!」と言って押さえていた手を離した。