先生に診てもらう前は、島原の家の玄関前の一段きりの段を降りるときでさえも私の肩を借りねば降りられなかったのに、今日などは(治療開始一週間後)自力で降り(無論昇るときは人の肩を借りねばならない)、一日一日、2、3メートルずつ、独力で歩ける距離を伸ばし続けている。

嬉しくてたまらない。治療(食餌療法+マッサージ+やる気)の効果が目に見えることはとても喜ばしいことだ。励みになる。私もいっそうやる気が起きる。

今までの善一さんの靴は重すぎて(約1kg)、軽いスポーツシューズ(約200g)に変えたことも歩く距離を伸ばした一因であろうが、それだけでこんなに歩けるようになるわけがなく、やはり治療効果が出ているということであろう。

日は変わって、今日は昭和61年6月8日(日)。昨日、福岡から義妹のA子さんがやってきた。一人増えただけで家の中が賑やかになり、未央がとてもはしゃいでいた。A子さんは相変わらず涙もろく、善一さんの病状がひどくなったと思って涙を浮かべていた。

しかし、私は、善一さんの病状は確実に治ってきているし、何よりも本人が病気に勝とうという気持ちになったことで、病気は半分治ったようなものだから、そのことを単純に喜んでほしいと、彼女に言った。泣いてばかりいられたら私が困るのだ。しかし、彼女が今回も涙もろかったのは、あとでわかったことだがほかにも理由があったのだった。

次回更新は8月22日(金)、22時の予定です。

 

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