ベンチに座り、スマホを探り始めた男は、妙な文字を見つけた。
「赤を高価買取。性別、年齢不問」
覚醒剤から詐欺、殺人まで何でもあり、という噂のある闇サイトだったが、男は「高価買取」の文字に惹かれた。
早速メールを送り、返信に書かれた電話番号にかけてみた。
「何を買ってくれるんだよ」
男の質問に、抑揚のない女の声が響いた。
「血だよ。二百ccで一本」
一本が一万を意味していることは、すぐ分かった。
「それって非合法じゃねえの」
「嫌ならいいんだよ」
妙に圧力のある声だった。こっちの立場は見透かされている。それに、血を抜くだけで金をもらえるなら、こんなに楽なことはない。何か裏があるに違いなかったが、裏のある話ほどうま味があるものだ。ひと口乗っかれるかもしれない。
男は約束の場所へ向かった。
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