それ以上は何も話さずに二人ともひたすら麺を啜った。

腹が膨れた頃には、街はネオンに染まっていた。

ラーメンで満たされた腹を抱えながら歩いていると、酔ったオジサンにぶつかりそうになった。スマホを見ると二十時を指していて、この酔っぱらいたちの浮かれる様に納得する。

今度は千春がその場で立ち止まり、ぶつかりそうになる。

「アイス食いたい」

「私も食べる。チョコがいい」

「バニラ」

私たちは目的地をコンビニへとスイッチした。

コンビニに着いて店内を歩くと、客は一人も居なかった。端にあるケースには数々のアイスが並んでいる。ガツンとこってりしたラーメンを食べた後では、もはや宝石のように見えた。

アイスを選び終わりレジに向かうと、あまり会いたくない人を目の端で捉えた。

「あ、雫ちゃんじゃん。わざわざ来てくれたんだ。そちらの方は、えっと」

「先輩、お疲れ様です。いえ、アイス買いに来ただけです」

「あ、この前話してた人か。同居人だよね」

千春はアイスを雑に置いて先輩を睨んだ。ついでに私のことも。

財布から小銭を出す時間すら惜しいのか、バーコードで会計を済ませて歩き出した。私は慌てて先輩に頭を下げてレジ袋を手に取り、後を追った。

千春の歩幅は男らしく大きくて、追いつけない。

「千春、なんか怒ってる?」

「別に」