第1章 夫婦の問題
(8)社会関係資本の乏しい男性
▼信頼感と幸福感を生み出す社会関係資本
日本男性に多い孤独は、隣近所や職場内外などで親しい友人のいない状態です。こうした孤独は、いわば個人から見た主観的な社会との関わりのなさです。それを社会全体の側面から見た客観的な視点であらためてとらえると、現状の孤独を冷静に見直すきっかけになるかもしれません。
そこで「孤独」や「社会的な孤立」とは対極の概念となる社会関係資本と呼ばれている概念について説明したいと思います(図1参照)。
社会関係資本とは、もともと地方制度改革の浸透や実施の状況を長年にわたり調査した著名な政治学者によって提唱された概念です(パットナムRD、他、2001年)。
イタリアのある地域では効率よく制度改革が行われたのに、別の地域ではそうではなかったことで、その違いを突き止めようとしたのです。
調査の結果、集団やその中での人付き合いや交流(人付き合い)、人や集団に対する「お互いさま」とするような相互扶助の慣習(社会参加)、そして人や地域に対する信頼(社会的信頼)を構成要素とする社会関係資本の豊かさの度合いの違いであることがわかったのです。
さらに、たとえば職場内の上司と部下というような上下関係の人付き合いよりも、地域の集団やスポーツクラブなどへの自発的参加による周囲とのいわば対等な人付き合いが社会関係資本としてはより優れていること、人付き合いや社会参加が増えれば社会的信頼も増強されることなども明らかになったのです。