俳句・短歌 短歌 自由律 2020.09.05 句集「愛のままで咲く」より三句 愛のままで咲く 【第6回】 馬場 美那子 “こぼれる愛 からめた指の すき間から” 十七音に込められた、愛と感謝の川柳句集 母へ、恋しい君へ、愛犬へ、かけがえのない日常へ。やさしく、時に激しい愛の詩。 5章からなる川柳句集を連載にてお届けします。 この記事の連載一覧 最初 前回の記事へ 次回の記事へ 最新 子を産めば母はどんなに喜んだろう 春昼や愛情過多の母娘草 母もまた母が恋しい秋日和
小説 『アイアムハウス』 【新連載】 由野 寿和 静岡県一家三人殺害事件発生。その家はまるで息をするかのように、いや怒っているかのように、大きく立ちはだかり悠然としていた 午前十一時。サイレンを鳴らさず、車両は静岡県藤市十燈荘(じゅっとうそう)に到着した。静岡中央市にある県警本部から十燈荘までは、藤湖をぐるっと大回りして藤市経由でトンネルを通り、小山を登ることになる。藤湖を見下ろす高級住宅街、十燈荘は、土曜の昼だが活気はない。既に外部への交通規制が敷かれているとはいえ、不気味に静まり返っている。ここで殺人事件があったことを、住民達が知っている気配はなかった。その家…
小説 『伊豆の御社』 【第4回】 ほそや まこと 消え去るひとりぼっちの男の記憶。 来歴不明、係累も辿れぬ男が生きた痕跡は、世界から消え去っていく。 取りあえずは農道の先の小高い山を目指して歩いた。道は記憶にある畦道よりもずいぶん長く感じられた。道の先にあるはずの祠も記憶の中のそれよりも遙かに遠かった。しかし、歩けば何かがあるような気がした。歩を進めるごとに祠の記憶は現実感を失い、漠とした記憶はますます希薄になった。歩き続けているうちにあれが現実だったのか夢なのかわからなくなった。ボクは歩を速めた。某県のある海沿いの町に、今は住む人もない家が…