皆で手分けして捜すうちに、
「スミちゃんが上りの列車に乗っていて、デッキで、一人で外を眺めていたのを見たよ。声を掛けると『家の者に黙っていてくれ』と頼まれた」
という、知り合いからの情報がもたらされた。
その翌日、彼女は一人で家に戻ってきた。
「心配かけやがって」
剛三は怒ったが、泣きくれるスミを前に、強く詰問することはできなかった。
真実を知るのは、父親として怖かったのである。 腫物に触るように、家中で遠巻きに彼女を見守るしかなかった。
しかし、つねは剛三と二人きりになると、言わずにはいられなかった。
「スミは、普通に嫁にいけるだろうか?」
*
下りの列車は、長福寺の裏手の第二踏切に差し掛かるカーブで、大きな鋭い警笛を鳴らし続けた後、急停車した。
「飛び込みがあったぞ」
怖いもの見たさで、近所の人たちと一緒に千津も駆けつけた。
人垣の間から覗くと、規制線を張った線路脇に、むしろをかぶせられた死体があった。そこから離れたレールの間には、人差し指をスーと伸ばした手首が転がっていた。