【前回記事を読む】テレビを消して黙々と食事する夫。食事が済んだら「俺は犬か! 俺はゴミか!」と、また急に訳の分からないことを怒鳴り始めた
糸の切れた凧(たこ)
三月十一日(金)
午後三時前頃に大きな地震が発生した。夜になっても電車が全面的にストップしているという。
案の定、孝雄からメールが送られてきた。
〈今日は、震災の対応で泊まりになってしまいました。いつも迷惑をかけてすみません〉
(迷惑をかけて……って、帰られへんだけやのに……)
そして次の日も、そのまた次の日も、私へのお詫びとお礼のメールが送られてくる。
〈大変な思いばかりさせてごめんなさい。震災の対応でなかなか帰れそうにないです。本当にすみません〉
〈すみません。いつも感謝してます。本当にごめんな〉
〈いつもありがとうございます。こちらは泊まりで明日も対応が必要になりました。ごめんなさい〉
私に晴香さんの手紙を見つけられてからというもの、泊まりを減らすようにして、仕事も早めに切り上げて帰ってきていたようだったが、この震災を機に、また連日のように泊まりや朝帰りの日が続くようになり、なかなか帰ってこなくなった。
朝方に帰ってきても、二、三時間仮眠してから、またすぐに駅まで送るという日々が続く。
ひと月が過ぎて、怪(あや)しいと思いながら、
〈東北のほうは被害がかなり大きくて大変みたいですが、あなたも休まず、連日泊まりや徹夜で大変そうですね。会社の被害、そんなに大きかったのですか?〉
とメールすると、こんな返信が。