俳句・短歌 短歌 自由律 2020.09.05 句集「曼珠沙華」より三句 句集 曼珠沙華 【第6回】 中津 篤明 「冬花火 亡び 行くもの 美しく」 儚く妖しくきらめく生と死、その刹那を自由律で詠う。 みずみずしさと退廃をあわせ持つ、自由律で生み出される188句。 86歳の著者が人生の集大成として編んだ渾身の俳句集を連載でお届けします。 この記事の連載一覧 最初 前回の記事へ 次回の記事へ 最新 姦通の 朝霧 はれて せせらぐや 八月の 海 美しく 怖ろしく 八月 の 砂丘はらはら 乳房ふさふさ
エッセイ 『逆境のトリセツ[パラリンピック特集]』 【新連載】 谷口 正典,益村 泉月珠 右足を切断するしか、命をつなぐ方法はない。「代われるものなら母さんの足をあげたい」息子は、右足の切断を自ら決意した。 失うのは生命か右足か究極の選択まだ寒さが残る三月。午前二時。ピンポーン。「こんな時間に誰?」上着を羽織りながら玄関を開けた。そこに立っていたのは、背筋を伸ばした警察官だった。「正典さんのご家族の方ですか」「正典の母です。どうかしたんですか?」「正典さんが、国道二号線でトラックとの事故に遭いまして……」「え……、正典は無事ですか?」「現在、病院に搬送中です」動転した母は、兄と一緒に俺が運ばれた病院…
小説 『ツワブキの咲く場所』 【第20回】 雨宮 福一 車に乗せられ、降ろされたのは人が集う場所。建物へ入ると、十字架が最初に目に入った。 【前回の記事を読む】いつか中を見てくれ…心不全で亡くなった親友が残した段ボール箱。そっと開けると、そこには聖書が入っていて…腕を引っ張り、起き上がるよう促される感触を覚え、私は驚いて目を見張った。腕をつかんでいたのは永ちゃんであった。玄関から吹き付けた風にあおられて、はっとして我に返る。手持ちにしている聖書に、永ちゃんが目を留めた気がした。「全く! ちゃんと眠ったか気になって来てみたら、玄関の戸…