【前回の記事を読む】偽名を使い、NGを食らった担当を再指名。マンションのチャイムを恐る恐る鳴らすも、中から反応はなく…

Chapter 2

スパイ大作戦

「そうだったんだ。でもしょうがないよね、私が流星くんを好きなあまり、他のお客様に取られたくなくて、私が恋人です。みたいな書き込みしちゃったんだから……」

真由子がそう言うと流星が、

「そうだよー。真由子ちゃんが、そもそもイケナイ事したからなんだよ。これからは二度ともう掲示板には、書き込まないって約束してくれるかな?」

「う、うん、もちろんだよ!」

真由子はしっかりとそう答えた。2人はベッドマットに向かい合って寝そべりながら、2時間の予約時間内、今日はマッサージなしでこれまでの事を話し、途中何度もお互いを強く抱きしめ合うハグを繰り返した。

真由子は流星に強く抱きしめられるたび……あーホント、生きてて良かったあ……この瞬間を夢見て、私は決死の戦線を乗り越えて来たんだわと思った。

まるで敵方の目を欺いて、捕虜に囚われし我が愛しの王子様に会えた、変装して忍び込んだ姫のような気持ちだった。そんな劇的な再会を真由子と流星はしたのだった。

「LINEを削除したから、新規で登録させて。真由子ちゃんと俺で、あちこち出かけたい所がまだまだたくさんあるんだよー。お台場のデッカいゲームセンターとか、ロッククライムするアトラクションとかあるの。車で箱根に行って温泉入るとかもいいなあ……」

(おいおい、ロングデートの費用と流星くんの日当まで私が支払うんだけどな……)

急に甘えたリクエストを出してくる流星に真由子は少し戸惑いながらも、それより何より自分が流星に嫌われておらず、事務所のせいでNGになった事実を知って喜んだ。

そんな中、真由子はつい愚痴をこぼした。

「流星くんに連絡も取れない辛さのせいで、私毎晩、高い電話霊感占いを何十回もしてしまったよ。人気の先生は10分で3000円以上もかかるんだから……」その話を聞いた流星の目の色が変わった。

「じゃ、真由子ちゃんとの通話は10分2000円にしようっと!」

何の躊躇もなくそう言ってのける流星に、真由子は内心戸惑いを隠せない。(NG前までは、頼んだらLINE通話で30分とかしてくれたのに……有料しかも霊感占い並みに高く私から通話料を取ろうとしているなんて……)

それでも終始ご機嫌な様子の流星に何も言えず、その日の予約時間内は仲良くイチャイチャした。

(私は流星くんにお金を多く出せる客だから、私が戻って来た事を流星くんは喜んだのかなぁ……)