「まあ、運命と言えば、説明がつくけどさ。なんかねえ…」
全くだ。こうして話していながら、我ながらそんなわけない、と思えてならない。
「…そこまでは思ってないよ、ただ…今は、この出会いを楽しみたい、そう思ってる。来週会うんだけど、多分それで終わりになるんじゃないかな。わからないけど…」
「ふーん…。まあ、あんたがそんな、珍しいよね」
高校卒業と同時に初めて地元を離れて横浜で一人暮らし、右も左もわからない状態の紫を、絵美子はずいぶんと助けてくれたものだ。大学からの紫の、ほとんど全てを絵美子は知っている。
仙台の写メに咲元は写っていなかった。絵美子は少しの間黙って料理を食べた。紫ももじもじと食べながら待った。
恥ずかしいけど、彼に惹かれているのも、こんな気持ちになかなかなれないことも事実だ。
「…いい大人なんだし、滅多にないことだし、もちろん本人の自由だけど…」
絵美子が慎重に言った。
彼女は積極的に人生を歩み、恋も散々味わってから、31で結婚した。エリートの旦那とバリバリ稼いでいるキャリア夫婦だ。
子供はいらないらしい。いつもあらゆることにトライしては輝いている彼女は、何故か紫に構ってくれる。
彼女の存在にはずいぶんと助けられてきた。いつか訳を聞いた時、
「正反対だから、かな?」と言っていた。
「あんたが傷つくのを、見たいとは思わない。ただ、傷ついたとしても、それも人生経験だから悪くはないと思うけどさ。ね、不倫じゃないよねえ?」
考えてもみなかったことを言われた。
「それだけは避けたほうがいいとは思うよ。あとはまあ…恋愛には色々あるから」
「既婚ではないと思うけど…」
といっても確信などあるわけもない。もしかしたら夫婦喧嘩だった可能性は多分にあるわけだ。さすが経験豊富な友人は、小言は言わなかった。