「ティーナ。先に進むぞ」
「ゔぅ……わかったよ」まだ寝ていたい様子のティーナは、嫌々ログについていった。時間が経つにつれ、ジョシュの言った通り、辺りは暗く黒い雲に覆われてゴロゴロと雷の音が聞こえてきた。とは言っても、こちとらもう二、三年以上旅をしてる。ティーナは別として、もう嵐には何十回もあっている。こんなのでは慌てふためかない。
そんな時、ティーナが口を開いた。
「……あーしって中の下なのかな」
「あ゛ー……よく、わかんねぇ」
「そっか……」
中の下発言はぐっさり刺さっていたらしく、ティーナはしょんぼりしながら歩いていた。
そんな時だった。いきなり雨が降り、地面が濃く変色し始めた。滝から落っこちてくるようなほどの勢いで降り始め、ゲリラ豪雨のようで、当たる水の一粒ずつが弾丸みたいだ。
「うわああ! 濡れちゃう!」
「濡れても乾かせばいいだろ……」
『ここら辺の地方の嵐は本当に危ないんだよ。この前もそのせいで木がなぎ倒されて……』もしも、ジョシュの言っていた言葉が本当だとしたら。そんなことが脳裏をよぎった。
「ティーナ、一回戻……」
ドガァン!!!!!!!!
空を切り裂く白い光が轟音と共に地上に突き刺さった。いきなり鳴り響いたそれが雷だと気づくまでは少し時間がかかった。
「雷!?」
「これ結構近くに落ちたぞ! 早く木の近くから離れないと——」
すぐ近くから、耳が壊れてしまいそうなほどの大きな音が鳴って、まぶしい光があたりを襲った。
「ッあ゛!」
近くにあった木に雷が落ちて、稲妻の形に木が裂かれたかと思えば、真っ赤に燃え始めた。
直撃こそしなかったものの、雷が近くに落ちた影響で、体がしびれて動かなくなった。
次回更新は7月12日(土)、12時の予定です。
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