「どうしてくれるんだよ。お前のせいでティーナが陰陽師みたいになっちまったじゃねえか」ログはそう言ってティーナを指差す。まるで誰かを呪っているかのような寝言を言っているティーナの様子を見て、ジョシュは冷汗を垂らす。

「お前さ、初対面の人の顔面を査定して、しかも口に出すって、ほんとにどうかしてると思うぞ。そもそも、なんなんだよ彼女にするとかなんだとか」

「ええっと、ぶっちゃけ言うけどさ。ほら、僕ってさ、可愛いじゃん?」

「え……? ま、まぁ事実か」

自分の顔をはっきりと可愛いと言い切れるジョシュのメンタルに驚き、同時にドン引きした。

「だからさ、僕より可愛い顔の女子と付き合うことが夢なんだ」

「それで女子の外見を採点している、と……お前、想像以上にやばい奴だな。まぁでもその採点多分合ってるんだろうけどさ」

「うぅ……」

「加えて『殺さないで』とか臆病でストーカー行為をするような奴か……お前正真正銘のクズだな」

「ゔゔっ……」

「だいたいそんなに彼女欲しいなら、自分で探し回ればいいじゃねえか」

「だって怖いじゃん! ここは猛獣とかも少ないし、安全なの!」

「——だめだこいつ」女子の外見を採点、ストーカー、臆病者。あ゛ー、だめだ。こいつは庇いきれない。ただのクズだ。

「ごめん。もう行く」

もうなにもかも諦めたログは、何も言わずにティーナを起こし、先へ進もうとしていた。

「あ、ログ君、ティーナちゃん、待って!」

「なんだよ」

「だから、『ちゃん』付けで呼ばないでって言ってるでしょ……!!」ティーナはジョシュを睨みつけた。

「は、はい……。でも、もうすぐ嵐が来る。先に進むのは自殺行為だよ」

「たかが嵐だろ?」

「たかがじゃない。ここら辺の地方の嵐は本当に危ないんだよ。この前もそのせいで木がなぎ倒されて……」

あたふたしながら止めようとするジョシュを、ログは無視してティーナのほうへ行った。