【前回記事を読む】「うん……中の下」――初対面の男子が私の顔を至近距離でじーっと見た後、すかした顔で放ったひとこと。
第二章 旅立ちと仲間
臆病者
これは夢だ、とすぐに理解できた。今まで何度もこの悪夢を見たから、もう、わかってしまうのだ。
夢だとわかっていても、何度も見ても、心が抉(えぐ)られる。
『ごめんね……ごめんね、幸せにしてあげられなくて……産んでごめんね』
その人は、ごめんと言いながら、何度も「俺の名前」を呼ぶ。
ログが起きた時には、青かったはずの空はオレンジ色に変わっていた。耳にはまだティーナの寝言がぶつぶつと聞こえてくる。寝言というより呪文だな、とログは心底呆れた。何時間か経っているはずなのに、まだ言っているなんて、と。
続けてジョシュの方を見る。殴られたのがよほど効いたのか、まだ青い顔で気絶していた。
そろそろ二人とも起こさなければ、とログは立ち上がろうとした。
『産まなければよかった』
「……ぁ、あ」
その時、さっきの悪夢の言葉がフラッシュバックした。
何年も前からこうだ。何度も何度も忘れようとして、幸せだって思っても、この夢は忘れそうになった時に出てくる。本当に、タチが悪い。自由になりたかったから、助かりたかったから逃げたのに。なのに、逆に苦しんでいる。こうなったのは全て、自業自得だ。
「早く消えてくれよ……」
そうつぶやきながら、ジョシュを起こしに行った。
「おーい、起きろー」
「ん、んぁあ……ヒエッ殺さないでぇ!」
「起きて第一声がそれかよ。殺さねえよ。そろそろ起きろ」
「う、うん……」
ジョシュは怯えた様子で起き上がった。ようやくまともに話せるようになったジョシュに、ログは言いたかったことをすべて言った。