スパイ大作戦

横浜の人気セラピストのカオルとの居酒屋デートでしばらくは気分が持ち直したが、数日で真由子の気分は最低な状態に戻ってしまっていた。そしてやっぱり流星に会いたくてたまらない思いが真由子の胸には湧き上がってきてどうしようもなくなった。

そういえば昨日、例の電話霊感占いで30代の若手男性占い師からこんな事を言われた。

「そんなにそのセラピストに会いたいなら、格安携帯でも別に契約して別人として予約してイチかバチか会いに行けばいいんじゃないですか?」

(別の携帯で、別人として予約……その手があったか……)

真由子は目から鱗が落ちたような感じになった。確かにパラダイスアロマはマンションの部屋の中で男性セラピストと2人きりでマッサージを受けるサービスで、事務所も離れていてスタッフに確認される事もないシステムだ。

ルール違反だと真由子は重々承知しながらも、恋しい流星に会いたい気持ちを死んでも抑え切れないくらいになっていた。翌日には近所の格安携帯ショップで一番低価格の2台目携帯を真由子は契約購入した。

(これで別人の名前でメアド登録したら予約出来て、もう一度、流星に会いに行ける!)

決心した真由子は、素早く偽名を青木まなみとして新しいメアドを作り、パラダイスアロマのホームページからWEB予約を開始した。

流星の予約の空きは明日土曜の昼12時から14時までの最初の時間だけであった。そこに真由子は無事予約を入れた。