【前回の記事を読む】「浴槽に女性の顔を浸けて、呼吸出来ないように押さえ付けるとかですかね」特殊性癖の告白に困惑…
Chapter 2
崩壊の始まり
夕方にホテルを出てタクシーで真由子が予約した個室料理店がある西新宿のビルに向かう。タクシーの中で真由子は流星の手に自分の手を重ねていったが、緩く流星は、それを振り払った。
和牛肉が売りの個室居酒屋は高層ビルの49階にあった。個室の窓から見える西新宿の夜景が、とてもキレイだ。
真由子と流星は、2人で食事とお酒を存分に楽しんだ。流星は生ビールを皮切りに赤ワイン、そして濃いめのハイボールを7、8杯は飲んだ。
こんなにお酒が強いんだから、歌舞伎町でバーテンを苦もなくやれたんだろうと妙な感心をしつつも、予約時間の終了が迫ってくると真由子は寂しくなり、高層ビルの窓から見える西新宿の夜景をしょんぼりと眺めていた。
それを見た流星が、
「真由子ちゃんは、やっぱり女の子なんだなぁ……」と言った。そして、お会計を済ませビルのエレベーターに乗ろうとした時、流星は突然、真由子を抱きしめて、こう叫んだ。
「真由ちゃんギュー!! 可愛いから抱きしめたくなるよ。真由ちゃん寂しくないからね」
酔った流星の酔狂と分かっていても、真由子は嬉しかった。2人っきりのエレベーター内でも何度も流星は、真由子を強く抱きしめた。
新宿駅まで流星は、真由子の肩に手を回して歩きながら、こう切り出した。
「真由子ちゃん、もし俺が仕事で海外に行く事になったら、ついて来てくれる?』
突然のプロポーズのような言葉を言い出す流星に、相当酔っ払った上の言葉と真由子は理解しつつも、嬉しく思って返事をした。
「うん、流星くんの家の住み込みお手伝いさんとしてね、ついて行くね、もちろん……」この瞬間を思い出すと、真由子は今でも幸せな気持ちになる。