拒絶
この間の西新宿でのデートは久しぶりに楽しかったのだが、その後は、真由子が流星にLINEを送ってもなかなか既読が付かず、返信も少なくなっていた。
真由子は流星がSMに興味があると言ってサディストだと告白したのを、最近の素っ気ないLINEと結び付けようとしたが、それは無理があった。
真由子は高尾山をハイキングする出張デートの予定を立てて、流星にLINEで伝えていた。店舗マッサージの予約も入れた。予約を入れると以前は必ず流星からお礼のLINEが来たのだが、一日待ってもLINEは来なかった。
真由子はWEBから予約を取り消した。そして数日後また我慢出来ず予約を入れた。そして再び流星からのLINEを待ってみたが、それも返ってくることはなかった。何かがおかしい……。
(何なの? 何で予約したお礼の返信がないの? もしかして掲示板書き込みの件が、尾を引いているのかなぁ……)
真由子の精神的な動揺と落ち込みは、次第に酷くなり、毎日何かしらLINEを流星に送ってみるが、前みたいに返信は来なかった。
(どうしたらいいんだろう……こんな状態で高尾山ハイキング8時間出張コースなんて予約出来ないや……)
真由子はたまらずある夜、流星に電話した。東京オリンピックの真っ最中だった。
「はい、もしもし真由子さん、何か?」
「あ、あのね、コロナが蔓延してるし、オリンピックが開催されてる都内に出かけたくないの。だから高尾山ハイキングの8時間の予約をキャンセルさせて頂きたいです」
電話の向こうから明らかに不機嫌な流星の声が返って来た。
「この前から店舗予約2回キャンセルして、俺も楽しみにしていた高尾山ハイキングもキャンセルするんですね、真由子さんはもう信じられないな……」
真由子はなぜキャンセルする気持ちになったかを流星に訊いて欲しかったのだが、それもなく2人の間には白けた空気が漂うばかりだった。