どのアトラクションもほぼ待たずにスムーズに乗れる快適な回り方が出来た。それなら楽しくて仕方ないはずなのに、真由子は今ひとつ浮かない気持ちだ。

なぜならパーク内では流星が当然、真由子と手繋ぎして普通のカップルのように接してくれるとはなから期待していたのになぜしないのか? 真由子が流星に訊ねると、

「僕は、たとえ相手が彼女でもこんな暑い日に手繋ぎなんかしませんよ。だって手汗かいてるでしょ? 真由子さんも。そういうの苦手なんで」

「そうなんだ……パーク内は手繋ぎしてくれるのかと思ってた。ガッカリ寂しいな……」

無理にお願い出来ないのが、お客様とセラピストとの関係。お店のホームページにも出張デートコースの規定などは特に示されてなく、それぞれのセラピストに接客は任せているのが、パラダイスアロマ店のやり方だった。

山の間を走り抜けるジェットコースターや、高い所から水しぶきを上げて落ちる乗り物などに連続して乗ったあと、出口に写真が貼ってあった。両手を挙げてバンザイして楽しそうに落ちていく流星の横、真由子は必死の形相で安全バーにしがみついて顔を伏せて写っていた。

(何これ、カッコ悪い、この写真は要らないわ……)

残念なことに真由子には楽しい記念のツーショットとはならなかった。

その後もパークの最新アトラクションや、シューティングゲームを楽しんだ。シューティングでは以前に何度かやった事のある真由子が前半流星を引き離して優勢だったが、そこは今どきの若い子であるから、後半の出口では点数も倍になって、流星が見事逆転勝利を収めていた。

悔しがる真由子、余裕の笑みを不敵に浮かべる流星、ようやくテーマパークらしい楽しい雰囲気になってきた。早めの夕食をパーク内の和食レストランで済ませ、夕方の時間、パークの城の前を2人は歩いていた。立ち止まり2人それぞれに写真を撮り合う。

真由子はテーマパーク用に不思議の国のアリスを彷彿とさせるような可愛いネイビーのワンピースを着ていた。裾が広がり配色が違うそのワンピースの裾を手に持って広げ、まるでプリンセスがダンスを踊る時のようなポーズで流星に写真を撮って貰った。

その写真は良く撮れていた。奇跡の一枚である。何気ないショットは、惨敗する真由子なので、この可愛い写真は、真由子のその後の宝物となった。そして真由子はこのパークデートが決まってから考えていたお願いを流星に切り出した。

「あのね、流星くん、城の前で私に何か告白して欲しいの……」

「歩きながらでいいですか? 立ち止まっては、ちょっと恥ずかしいんで……」

「あ、はい、仕方ないな……」

本当は流星にひざまずいて言って欲しかったけど、強制出来ないので致し方ない。

「じゃ、言いますよ。真由子さん、これからも2人でいろんな場所に出かけて、たくさん思い出作っていきましょう!」

流星から心のこもった言葉を受け取って、真由子は嬉しかった。夢見ていた愛の告白とは違っていたけども、流星の一言一句噛み締めるような話し方は、真由子の心に沁み渡るようだった。

次回更新は7月1日(火)、18時の予定です。

 

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