「では田賀さん! 田賀さんが京葉線で見つけた私の同僚、丸田というのですが実は未だ亡くなっていないのです……」と言った。
すると浩が、「え!?」と大きい声を出して吃驚し、
「私が見た時、息をしていなかったと思うのですが……」と話した。
「仮死状態だったようで、救急隊員の方の処置とその後の病院の対応で何とか未だ生きており集中治療室で処置中です。此処一両日が山だと医者から言われています。私もずっとそばに居たのですが、丸田のブレスレットが急に反応したので意識が無い丸田を残して、此処に来た次第です」と話した。
浩は、「そうですか……何とか元気になっていただきたいです、そうすれば私が狙われる理由も分かりますので……」
「確かに!」と良は言った。
良が、「そうだ!」と言って傍に有った切れたブレスレットの腕に繋がる部分を取り上げるとキーを差し込む部分を何度か回して、「よし!」と言った。
「此れでブレスレットから発信されている信号は止まりました」
次にブリーフケースを傍に寄せて持ち上げると鍵を開けてケースの上蓋を開け、手提げ部分の近くに有る同じオストリッチの革で上手に隠された容器の中に嵌められているチェーンの切れた部分を少し引っ張りながら、容器の一部を触ってチェーンを抜き出し、
「ブリーフケースの発信信号も止まりました」と言った。
「此れでブレスレットとブリーフケースの所在は分からなくなった筈です、多分これを狙っていた人物も既にグリーングラスホテルの近くまで来ていると考えていた方が安全です。ピストルを都心の真ん中で撃つくらいの危険人物ですから油断は禁物です」と言った。浩も大きく頷いた。
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