そしてアカデミアの世界から完全に追われた今は、皮肉なことに、(世界初の?)パーキンソン病専門の「研究」コンサルタントとして、人生の中でやっと自分のやりたいことをやっているところです。
なお、主に外国の研究機関を対象にコンサルタントをしているので、社名(個人事業)は英語表記です。極めて変わった民間医学研究者です。
私が本書を上梓した理由は、四半世紀以上に及ぶパーキンソン病専門の臨床医・研究者として得た知識・経験・研究成果を世間に還元し、私が確信する、できるだけ進行を抑えるための方法論を伝えたかったからです。
かつて病気の原因解明や治療法の開発は、まず疾患の病理・病態を理解し、次に分子生物学的・細胞生物学的手法を用いて分子および細胞レベルでの病態解明をしていくのがオーソドックスな研究スタイルであり、その解明の流れから大きく外れることはありませんでした。
残念ながら現代は、権威者が病理学・生理学などの基礎医学を軽視し、病気に対する深い理解や考察がないまま、部分的な分子生物学・細胞生物学的手法のみで自分たちの仮説に都合の良い実験条件を設定し、実験の「再現性」を担保するものの、結果として真実からかけ離れた方向に向かう仮説を作ることが少なくありません。
ここでの再現性とは「本来自然界に認められるものの再現」とは異なる、実験者にとって都合の良い再現性を決めることに他なりません。設定条件を変えることによって実は結果も変わってしまうのです。
実際筆者が研究者としてスタートした時期、つまり家族性パーキンソン病の最初の遺伝子クローニングの時代である30年前から、分子生物学的・細胞生物学的手法による研究成果が金科玉条のようなものとなり、結果、特に大学医学部ではインパクトの強いストーリー先行の論文が量産され、真の病因とは似ても似つかぬ間違った方向へと一部パーキンソン病研究が進んでしまったのです。