特別な存在

その者の生い立ちは、インドのヒンズー教の神々にさかのぼる。ブラフマー、ビシュヌ、シバという神々の中で、シバ神の神妃にあたる「山の娘」を意味するパールヴァティーの涙が流れ落ち、水晶の塊となった。その水晶は、何千年もの間、地中にとどまった後、火山活動によって水蒸気となり、生命力を得ることになる。

その生命力が、インドの古代文明モヘンジョダロの時代に、一人に入り込み、生まれることになった。名前は、ウーマという女の子であり、小さいころから神殿に行っては勉強をし、快活な子どもであった。

十三歳になるころ、いつものように神殿で神様の話を聞いて、神官に様々な質問をしていたウーマは、夕日が傾き、すでに夜になっていることに気づいた。家に帰らなければならない。そう思いながら夜空を見上げてみると、月が満月になっていた。

「ああっ、満月だわ。足元を照らしてくれる明かりとなってくれるのね。お月さん、ありがとう!」そう言って、ウーマは家路についた。帰り道の途中に、サカキの木がうっそうとした茂みの中を通った時のことである。道から少し離れたところに大岩がある。ビッグストーンという。そこの上に、白い衣を着た美しい輝く女性がいる。

「いったい、誰だろう?」と、思ったウーマは、穏やかで心優しい、金色の肌を持つ美しい女の人に話しかけた。

「あなたは、誰ですか? どうして、こんなところにいるのですか」

すると、女の人はこう言った。

「私は、パールヴァティー。あなたのことが気がかりで、月の神様の許しを得て、ここで待っていたのよ」

「えっ! どういうこと?」と、ウーマ。

「あなたは、私の分身なの。私の命があなたの中に、注がれているの。だから、あなたが幸せになってほしいと思っているから、こうして会いに来たのよ」

「えっ。わからない……!」と、両手で頭を抱えたウーマ。

「今はわからなくてもいいわ、ウーマ。あなたをいつまでも見守っています。その証として、あなたの右手の薬指に指輪を授けるわ。その指輪は、特別な人しか見えないのよ」

「どうして私の名前を知っているの?」

そしてウーマは、自分の右手を見て、びっくり……月の光をそのまま輪としたような指輪が薬指にはまっているではないか!

もう一度見上げて、その女の人に話しかけようとしたら、……すでに、誰もいなかった。

ウーマは、「不思議だな……」と呟き、家へと帰っていったのである。

 

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