『スカラムーシュ・ムーン』/海堂尊/新潮文庫(2018年3月発行)
【作品概要】
本書は前作の『ナニワ・モンスター』続編ともいえる作品である。本書を読む前に一読をお勧めしたい。ちなみに、本書の題名にある「スカラムーシュ」とはイタリアの即興喜劇の道化役・ほら吹きの臆病者の役名である。大ぼらを吹く主人公・彦根新吾を暗示している。
【あらすじ】
第一部 ナナミエッグのヒロイン
新型インフルエンザ「キャメル」ウイルスに痛みつけられた浪速市に今度はワクチン不足の危機が迫る。浪速大学のワクチンセンターで多量のワクチン製造をもくろむ彦根が、有精卵の納入先を求めて加賀市のナナミ養鶏所を訪れる。養鶏所の娘まどかは、紆余曲折の末所属する大学院の仲間と1日10万個の有精卵の製造、納品を受け入れる。
第2部 三都物語 浪速・桜宮・極北
スカラムーシュの異名を持つ彦根が、浪速共和国を実現させる軍資金獲得の問題を、村雨浪速府知事に持ち出す。彦根先生のとてつもない資金調達の方法が語られる。ウエスギ・モーターズ会長の手術代の回収、モナコに隠された天城医師の残したアマギ資金の調達である。
一方、東京地検特捜部の福本本部長から、「無声狂犬」の異名を持つ捜査資料室長・斑鳩に、浪速地検の鎌形副本部長潰しの命が下りる。警察機構との絡みも加わり、彦根陣営と霞が関との間の陰謀をめぐる戦いが繰り広げられていく。
第3部 スカラムーシュ・ギャップ
彦根が資金調達のためにモンテカルロからジュネーブ、ベネチアまでヨーロッパを、まさしく八面六臂の勢いで飛び回る様子を詳細に描いている。
第4部 卵が見た夢
最初の有精卵の納入期日まで1カ月に迫ったある日、ナナミエッグの運送を引き受けているふくろう運輸から、今回の有精卵の運送は出来ないとの知らせがあった。卓也はこの有精卵の運送に特化した会社「真砂エクスプレス」を立ち上げ、ベテランドライバー・柴田と共にこの困難な運送を引き受けることになった。様々な問題を克服して有精卵の配送が軌道に乗り出した。
第5部 スクランブル・エッグ
斑鳩室長と組んでいる警察庁の雨竜こと原田は、斑鳩室長と組んで鎌形を冤罪で逮捕して村雨陣営を攻撃する。また、浪速大学ワクチンセンターの樋口の妹から、ナナミエッグの有精卵のことを知り妨害する。
11月に入りインフルエンザが流行する時期になって、メディアがワクチン不足を報じた。浪速府が独自にワクチン備蓄に成功したことで村雨の評価は上がり、新党「日本独立党」の結成に持ち込む。ところが、新党のお披露目パーティの席で雨竜が、彦根が用意した資金はすべて架空のものであることを暴露した。どんでん返しが起こり村雨の目論見は絶望的になる。
はたして、最後の勝利者は誰か。物語はさらに続いていく。
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