加藤一郎先生の見解

このような考え方に対しては、反対論も強かったようである。

加藤一郎先生は、同シンポジウムの質疑の中で、次のように述べられている。

すなわち、「国家補償に対する反対が、さっきおっしゃいましたように非常に強いのですが、私としてはぜひ国家補償制度を設けるべきだと考えておりますので、その根拠を幾つかあげてみたいと思います。

第一には、原子力災害というのは、災害として非常に特殊性を持っている、……長期的に見るならば確率は非常に小さいものですから、あるいは保険でカバーできるかもしれないと思うのですが、現在はともかく国家補償で一応カバーしなければならない……

第二は、国家の産業政策としてエネルギー資源の足りないところを補うということが必要と同時に、原子力で巨大なエネルギーを作ることはそれだけ国民の就業の機会を増加し、雇用、収入の道を広げるわけですから、国家の産業政策としてやはりそれをとるべきであろう。

その点については我妻先生のおっしゃった通りです。

第三に自然災害との比較ですが、台風などの災害と違って、人間が作ったものである以上、それに対する万全の措置はやはり人間が講じておく必要があるのではないか。

……国営にしたらどうかという問題については、国がやれば国家が全部その責任を引き受けることになると思うのですが、それならば私企業にやらせて、私企業の力を超える部分を国が引き受けるということでも結果的には同じことになるのではないだろうか」と指摘されていた(私法22号79‐80頁)。

以上のように、原子力政策の推進に当たっては、国営にしない場合には、原子力災害についての国家補償が大前提となることが、議論されていた。

 

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