篠田さんはこれまでも何度も来たことがあるようで、店員さんから「こんにちは」と声掛けがあった。にこやかに会釈して、店員さんの案内で二人は駅前広場がガラス越しに見えるテーブルに着いた。

店員さんが「お食事にされますか?」と篠田さんの方を見て聞いたので「山形さん、少しお昼には早いけど済ませましょうか?」と同意を求めて来たので「そうしましょう」と言って、深く椅子に腰掛けた。

周囲はガラス張りで明るく、特に広場が見える窓側の席は弱々しい屈折した太陽の陽ざしが差し込んで、二人のテーブルを明るくしていた。

篠田さんが「朝方運動すると、昼頃になると心地良い疲労感が出てくるわね。本来、人間の体は、午前中は夜の延長戦で体は休んでいるのよ。それに反して動かすもんだから体が反抗しているんだね」

「原始時代は、多分午前中は狩りに行かなかったのよ」と応じた。

二人は店員さんが持ってきたメニューを見ながら、しばらく沈黙の時間が流れた。篠田さんが

「決まりました? ここのランチプレートは女性たちに人気なんですよ。限定二十食で、プレートに新鮮なサラダ、焼き魚、お肉、魚介がフランス風に仕立ててあるの。フランスパンも焼きたてで美味しいわよ」

「じゃあ、それにします」とあっさりと篠田さんのお勧めに相乗りした。

誰を選び、何を捨てたのか。

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